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『現代イスラーム思想の源流』

飯塚正人 山川出版社

先日読んだ『イスラーム思想を読みとく』は、近現代のイスラーム思想をてがかりに現在のイスラーム社会や政治を考える、よい本でした。

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いっぽう、本書はイスラーム思想の通史となっています。
『イスラーム思想を読みとく』でおすすめの本となっていました。

預言者であるムハンマドが死んでから、ウンマ(イスラーム共同体)はシーア派、スンニ派などに分裂します。
直面したのは『コーラン』などのテキストに記載されていない新たな事態にどう対処していくかという問題。
それぞれの派において、法学理論が作り上げられていきます。

中世にもさまざまなウラマー(学者)は現れますが、思想としては停滞します。
しかし19世紀に入り、ナポレオンがエジプトを占領するのを手始めに、西洋近代文明が圧倒的な政治力・経済力・軍事力とともにイスラームの前に登場してきます。
西洋に対抗するために、イスラーム思想は活発化を余儀なくされます。
その中には、「真のイスラーム」を再考し、従来の解釈の「誤解」をただそう、とする試みがありました。
しかしこの考え方は、ムスリム諸王朝が大胆な西欧化を進めていくために事実上の政教分離をすることの理論的裏付けとなるものでした。

20世紀に入ると、第三次中東戦争やイェルサレム陥落など、ムスリムにとって屈辱的な事件が発生します。
従来の政教分離でいいのか?という声が高まります。
イスラームを政治原理として見直そう、という考え方が生まれてきました。
その流れで発生したのが「イラン革命」でした。
イスラームが国家の政治原理となっている現在の状況は、むしろ新しいものだったのです。

依然として、イスラーム世界は西欧との緊張関係をはらんでいます。
イスラーム思想は今後の世界を考える上でも、重要な要素です。

本書はコンパクト(本文で88ページ)で、冊子と言ってもよい量です。
よくまとまっていて、イスラーム思想を概括するには最適かと思います。

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