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『考えよ――なぜ日本人はリスクを冒さないのか?』

イビチャ・オシム

 

オシムはJEFの監督の頃から大好きだ。

オシムの本はいくつか出ているが、この本はオシム本人が一応書いた体裁となっている点で、私がこれまで読んできたオシム本とは異なる。
前半は日本代表へのアドバイスみたいなものを含めた2010ワールドカップの話。
後半は日本サッカー全般への提言。
スポーツの監督が書いた本だと組織論やら日本人論についての記述がスポットライトを当てて紹介されるものだが、せっかくなのでその辺を紹介してみる。

 私も、時折「日本人の無関心」を感じたことはある。負けることをまるで仕事の一部のように捉え、敗戦に慣れてしまっているのだ。
日本人は、ドイツ語で言う「BISS(噛み付く)」、英語で言うなら「LAST KICK(最後の一蹴り、最後の意地)」と呼ばれるものを持っていないように見える。それは競争社会を勝ち抜こうとするための意地やプライドであり、人間的な迫力と言ってもいいのかもしれない。(中略)
サッカーの世界では、負けることを何とも思わないような選手には用がない。だが、日本人は、どうも負けることの悔しさを正面から受け止めない。それが美徳だと勘違いしているようだ。(P150)

ごもっとも。

日本人と一括りにするのはやめたいが、少なくとも自分は負けず嫌いな割には、負けたときにそこから逃げてきた。

とはいえ、これを「いき」と感じている部分もあって、難しいところなんだよねえ。

(日本サッカーは)ランニングとプレーのビルトアップにおいて組織化する訓練も足りていない。計画通りにゲームが進まないと選手はナーバスになって忍耐力を失いがちになる。すぐに作戦に対する技術的アドバイスなども忘れて、ずるずると負け始める。たとえ負けるはずのない状況でも理性を失ってしまうことがある。
私なりに日本の歴史をふりかえると、神風特攻隊作戦などが行われた太平洋戦争においては、恐るべき訓練と自己鍛錬を要求されたに違いない。そういうディシプリンは本来、日本人の美徳だったはずだ。しかし、私が代表監督の時代には、彼らはサッカーにおいてディシプリンを欠いていた。決定的なミスを犯すのは、そのせいだった。(p103)

規律正しい、と言われる日本サッカーに対してはこの批評は意外だが、的を射ている。

苦しい場面こそ粘り強くならなければならないのに、すぐにあきらめてしまうのだ。

これも日本人と言うよりは私じしんの話だが。依存心が強すぎるのか。
耳の痛い話も多いが、それはそれとして、たとえば中村俊輔と本田のどちらか一人しか使えないのであれば、古い井戸(中村)に水があるのに新しい井戸(本田)を掘るのはやめた方がいい、なんて話がとてもおもしろいのだ。
人生論というよりはやはりサッカーの本である。
かえすがえすもオシム監督でワールドカップに行ってほしかったなあ、と思ってしまう。

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