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『あなたの苦手な彼女について』

橋本治

 

たぶん以前にも書いたのだろうが、橋本治の新書を読むということは、橋本治の思考の道筋をたどりながら読むことなので、わかりやすい結論にすぐ到着することはない。
回り道、脱線は当たり前だけれども、思考とはそもそも一直線では行かないものであって、そのうえ橋本治は一筆書きで書いているわけではないのだろうから、その辺も計算尽くで脱線しているのではある。
「あなたの苦手な彼女について」の「彼女」とはどうやら、「あなたはなにも分かってはいない」と批判をし、しかし世の中に対して責任を決してとろうとはしない人、すなわち女に限らない、今どきの私たちのことらしい。

「ここは男社会だ!」「そこは男社会だ!」といってしまえば、それを言った女達は「ここ」や「そこ」に対して、至って無責任に振る舞うことができます。
「女にも社会参加をさせろ!」と言って、参加はしたけれども、なんだか思い通りにはならない──それを自覚して、「ここは男社会なのだ」と思ってしまえば、「じゃ、言うことは聞かない。聞く必要はない。どこまでも自分の思う”正しさ”を押し通すのだ」と言うことになります。それは「信念の人」でもあり、また「どうしようもない頑固者」でもありますが、つまるところは、「あなたの苦手な彼女」の誕生だということです。

正しすぎることはあまり正しくないことだ、と常日頃から思っているけれども、それを理屈として説明してくれている本だと思う。
たぶん本来の正しさというものがあるとしたら、それは批判にさらされることを当然とする立場に置くことであるのに違いないのです。
そんなふうな感想はこのほんの一部分に過ぎなくて、あまりに振り幅が広すぎてついて行くのがやっとの本でした。
これも読み返さないと。

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