石川善樹 西本真寛 スマート新書
仕事らしい仕事はしていないにもかかわらず、仕事力だけはつねづねアップしたいと思ってきました。
著者の石川さんは予防医学、行動科学、機械創造学などが専門の予防医学研究者・医学博士、西本さんは働く人の健康作りを専門にしています。
さて、今よりも仕事ができるようになるために、私たちは何をすればいいのでしょう?
お二人の答えは「頭と感情の使い方を知り、思考力を鍛える」ことだといいます。
ところで、タイトルの「フロー」とは何でしょう?
フローは、1970年代に心理学者のミハイ・チクセントミハイが名付けた概念です。「ゾーン」と呼ぶこともあります。ここでは統一して「フロー」と呼びますが、いわゆる「超」集中した状態のことを言います。
スポーツ選手がいう「ゾーン」の状態のことのようです。
では、なぜ「フロー」が仕事力をアップする(=頭と感情の使い方を知る)ことにつながるのでしょうか?
フロー状態の脳を観察すると、理性が落ちている状態であることがわかります。つまり脳の中のロジック回路ではなく、直感的にものごとを捉える部分がよく働くようになっている。だから、新しいことをひらめきやすくなっているのです。
なるほど。
集中しているときにクリエイティヴになるというのは私にもなんとなくわかる気がします。
経験は数少ないけれど。
その「フロー」に入るためには、4つのステップがあるそうです。
① 強い感情を感じる
② 一気にリラックスする
③ 目標行動の実施をイメージ
④ 動作に入る前のルーティン
①と②は相反するように思えますが、適度なストレスを感じつつのリラックスした状態がフローに入りやすい。
あまりにリラックスだけしていると「やる気が出ない」状態になってしまいます。
③の目標は「今自分ができることの「ちょっと上」」に設定することがこつ。
④はうかつにデスクに向かうのではなく、イチロー選手が打つ前に行う一連の動作のように、デスクの上をウエットティッシュで拭いたり、深呼吸を数回してパソコンを開いたり、といったルーティンを決めて挑むのがいいそうです。
さて、「フロー」に入って、その状態で考え続けるにはどうすればいいか?
たまたまフローには入れたとしても、私にはその集中力が持続する自信がありません。
考え続けるために最も重要なのは、「飽きたらすぐやめる」ということです。
ええ?いいんですか?
なぜなら「脳の疲弊のサインは「飽きる」という感情で現れ」るからです。
脳の疲労は「飽きる」→「疲れを感じる」→「眠くなる」という段階をたどります。
「眠くなる」までいくと回復が遅れるので、「飽きる」の時点で休憩を取った方がリカバリーが早いのだそうです。
ただ、飽きた時点で「そもそも自分は何に対して飽きているのか」というように、根本的に問い直すことができる人ほど長く活躍できるのではないか、といいます。
森博嗣さんは、この本と真逆のタイトルの『集中力はいらない』の中でこう書いています。
まずは、リラックスして、考え方を柔軟にしていく。ものの見方から改める。もし、行動に移すのならば、毎日コンスタントに、少しずつ進める。これも、分散型の鉄則である。一つに絞らず、なんでも、いくつでも始めれば良い。達成することだけが目標ではない。
また、こうもいいます。
思考するのが人間であり、思考しているから自分が存在する。逆にいえば、考えないほど人間から遠ざかり、機械に近づく、ということになるかもしれない。
[blogcard url=”https://madao-betsuo.com/2018-03-05-213050/”]
思考し続けるためには、リラックスして、飽きないようにすること。
アプローチは異なるけれど、なんとなく同じような結論になるのがおもしろいですね。
森さんの本を読んでから、数冊の本を併読し、飽きたら次へ、という読み方をしています。
できるだけ毎日コンスタントに読み進めるようにしているので、これに「フロー」が加わったらいいのですが。
このほかにも感情のコントロール法や、ブレストの効果的な使い方などもあり、読めば仕事力の上昇は見込めるのではないでしょうか。