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『知の仕事術』

池澤夏樹 集英社インターナショナル新書

 

「○○術」とか「××の方法」とかのタイトルの本に惹かれる。
この間、書店で『考えるということ-知的創造の方法』という本を見つけた。
タイトルだけでほとんど買いそうになったのですが、念のためさらさらとめくってみるとなにか既視感が。
よくよく見ると、もともと大澤真幸さんの『思考術』というタイトルだった本を文庫化するに当たって改題したそうです。
その『思考術』はすでに買ってました。
危ない危ない。

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さて『知の仕事術』ですが、まずこの本の何がいいかというと、細部を聞かせてくれるのがよい。

デジカメがCanonのixy190であるとかデスクの照明がZライトであるとかボールペンがフリクションの3色を使っているとか。
道具をまねれば、池澤さんのような作品がすらすらと書けるのに違いない、とつい思ってしまうのだ。錯覚だが。

池澤さんがまだ読んでいない本が意外。

告白すれば、ぼくはまだ『ドン・キホーテ』や『神曲』や『マハーバーラタ』や『太平記』を読んでいないいや、自慢ではないが読んでいない古典は山ほどある。(p90)

これを知ってすごく楽になった。古典読まないといけないという強迫観念があったから。

ちなみに私は『神曲』には挑戦している(自慢)。
ただ、結果として読めなかったとブログに書いてありました。がっくり。

本の扱い方も参考になった。

松岡正剛さんや齋藤孝さんが「本は汚すべし」と言っていて、その影響で三色ボールペン買って線を引いたり書き込んだりしていた。
ただ、いつも躊躇があり葛藤があって、その結果線引きは思い切りが足らず中途半端になり、本の内容もかえって入りづらくなったり。
池澤さんはこう言う。

 本気で読むときは気になる箇所にマーキングをする。ただし6Bくらいの太くて軟らかい鉛筆で行頭に印をつけるかせいぜい単語を丸で囲むくらい。消そうと思えば容易に消せるくらい。ぜったいにポールペンで書き込んだりはしない。これはぼくなりの本に対する敬意である。
それから付箋でタグをつけることもする。要所要所を読み返して本の内容を再構成するにはタグが必要になる。このとき付箋はポストイットの最も小さいミニサイズ(幅7.5ミリ長さ25ミリ)を使う。タグに書き込みはしないから大きくなくてよい。(p110)

つまり本はじぶんのものだから汚してもいい、どんどん書き込んだり赤線を引いたりしていいと考える人がいる。ぼくはどうもそれができない。(p111)

自分のやりやすいようにマーキングなりをしていけばいいのだな、と安心した。

ということで、早速6Bの鉛筆とポストイットを注文しました。
そこはぶれない。

アイディアについて。

明け方などに頭が冴えて、いいアイディアが浮かぶことがないわけではないが、最もアイディアが涌くのは実は書いているときだ。書くというのはすなわち考えることで、時間をかけて少しずつ構築していくような大きなグランドデザインであっても書きながら考えることがほとんどだ。(p165)

分かっていたつもりだったのだが、それでも自分の中ではアイディアは空から降ってきて、それを書き留める、というふうに考えていた部分があった。

村上春樹さんも小説を書くには、毎日とにかく机に向かうこと、というようなことを言っていた気がする。
結局、いかに書くか、という問いの答えは、こつこつ手を動かして考えながら書いてゆくしかない、ということに尽きるのだろう。
このブログもずいぶんさぼっていたけど、この本に励まされて、書きながら考えることをもう一度続けたい。

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