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『幕末史』

半藤一利

 

歴史について語る本についてはどんなものだってバイアスがかかっているのに違いありません。
語るという行為はたぶんどうしようもなく好き嫌いを現してしまうのです。
したがって、その語りを受け取る側もひょっとしたら違うぞ、眉唾かもよ、と思いながら語り手に向き合うべきなのでしょう。
さて、江戸っ子である半藤一利さんは子供の頃から話を聞いていて、自然に薩長嫌いになっていったそうです。その結果、こんな風に「はじめの章」で言ってます。

 というわけで、これから私が延々と皆さんに語ることになります幕末から明治十一年までの歴史は、「反薩長史観」となることは請合いであります。あらかじめ申し上げておきます。

これほど開き直られても、実際の語りはそれほど「反薩長史観」ではないような気もします。
じつはわたしがあまり歴史に興味がないこともあり、幕末の歴史をきちんと把握していないまっさらな状態のためなのかもしれません。
私と来たら新選組が何をやったのかはっきり知らないし、寺田屋事件と池田屋事件の違いもよくわかっていないどうしようもないやつなのです。
だからこそ、どきどきしながら読みました。
きっと講談というのはこんな感じだったのでしょう。
徳川慶喜ってもっと名君だと思っていたのですが、意外とどうしようもない人だったんだ。
西郷隆盛は詩人で革命家だったのだね。
そして半藤さんがたぶんいちばん好きだから、いちばん魅力的に語られているのが勝海舟で、これはかっこいい。
江戸の無血開城の話は知っていたけれど、もし交渉が失敗したらナポレオンの作戦を真似て江戸に敵を誘い込んで一気に町ごと焼いてしまう作戦まで立てていたとは。
すごい。
剛胆で明晰、筋が通っていないことは大嫌い。
こういう事実を知って、この年で驚いているのはきっと恥ずかしいことなのでしょうけれども、知らないままでいるよりはよいことにします。
司馬遼太郎の本よりはたぶん読みやすくて、わかりやすい。
他の時代の半藤さんの本も読むことにしたいですね。

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